IMSグループで介護分野の事業を担う株式会社ハンドベルケアでは、介護関連用品の販売・レンタルを行う商社の機能も果たしています。今回の座談会では、東京、横浜、千葉の営業拠点の責任者3氏が、介護市場の動向や強みである提案力について語りました。(このコンテンツは、ハンドベル・ケア創立30周年記念事業で制作された座談会パンフレットの内容を再編集しました) ※所属や役職は2023年11月当時

この記事の構成
施設の評価すら左右する「浴槽」「おむつ」「ベッド」
鈴木「先日、新鋭の機械浴槽を新規で導入いただいた大規模介護施設のご担当者様から『他にも機械浴槽をリプレースする計画があるので、ぜひ、また提案いただけないだろうか?』と、ご依頼いただけました。このようなご依頼は、営業に携わる人間として、とても大きなモチベーションになります」
大規模施設から在宅まで幅広い顧客セグメントに対応
中野「ハンドベル・ケアの営業部門では、介護や医療の現場で不可欠な多様な商材を取り扱っていますが、法人のお客様にとっては、“浴槽”に加えて、“紙おむつ”“ベッド”の3品目は、非常に重要な意味を持っています。サービス面からみると、その質を大きく左右し、施設に対する満足度や評価にもつながっていきます。また、施設の財政面からみても、支出全体に占めるウエイトも大きく、商材の中でも別格。お客様と継続的にお取引していくうえで、これら3品目に関して、どれぐらいご満足いただけ、付加価値をご提供できるか、私たちの提案力が厳しく問われます」
導入時の講習会やセミナーを企画運営
鈴木「前述の施設では、機械浴槽のリプレースにあたって、業界の大手が導入されているような最新式の製品や、人気の製品を幅広くご提案させていただいたのですが、何度も商談を重ね、介助浴の現状を見聞きさせていただいて、自分では『こういう製品が求めてられているのでは!?』と、ピンとくる気になることがありました。そこで機械浴槽のメーカーショールームにお客様をお連れしました。結果的に、候補の製品のなかでも高額な製品を導入いただけました」

和久井「私たちハンドベル・ケアの施設向け営業では、製品をご紹介いただいたうえで、ショールームにお連れすることもあれば、スペック情報からは読み取れない導入効果の定量・定性データのレポートをご提供したり、導入時の講習会やセミナーを企画運営したり、きめ細やかでタイムリーな対応を目指しています。こうした“浴槽”のような設備になると、数千万円規模の投資となることも珍しくありませんが、導入後に、実際にどう活用していくか、サービスの質を高めつつ、どう作業効率を高めていくかといった観点からのフォローの活動がとりわけ大切です」
カタログスペックだけで語れない現場ニーズ
鈴木「前述の施設では、機械浴槽を選定する決め手が、口頭では少しわかりづらく恐縮ですが、床面からの浴槽の高さでした」

鈴木裕之(すずき・ひろゆき)
ハンドベル・ケア横浜営業所所長。1982年、神奈川県生まれ。大学卒後に住設機器メーカーに就職し、宿泊研修サービスの専門会社勤務を経て、2010年にハンドベル・ケア入職。2017年から現職。福祉用具専門相談員。「ただ売るのではなく、大切なのは、確かな価値を伝え、喜んでいただくこと」との思いから、日々研鑽に励む。
和久井「ほう、なるほど。ただ。一般の方には『なんだ、そんなことなの…』と、ややもすると取るに足らないことのように思われるかもしれません。もう少し詳しく説明してもらっていいですか」
鈴木「はい、入浴介助の従事される方には、小柄な方もいらっしゃるのですが、小柄な介助者であっても、無理な姿勢を取らずに、入浴の介助ができるというのが大きなポイントだったのです。入浴介護は、力仕事になりがちで、腰を痛める方も少なくなく、職業病とも言われ、多くの方の悩みの種になっている実態もあります。カタログのスペックからは読み取れない、職場が抱える実情に応じた、ユーザー視点のご提案が求められているのだと思います」

ランニングコストを確実に圧縮する方法
中野「いま例示している“紙おむつ”のような商品ですと、施設全体で月間で数十万円の支出になるようなことも珍しくありません。施設側ではコストを圧縮していきたいのは当然ですが、メーカー側でも売上は確保したいところ。ハンドベル・ケアでは、病院や介護施設の側で、ご利用者や職員の満足度が高く、最も適正かつ継続的に使っていける商品を絞り込み、仕入れのロットを増やしてスケールメリットを背景に、メーカー側とも価格交渉ができるようにしています。施設のお客様の側では、ランニングコストの確実な圧縮につながります」
中野「“紙おむつ”も、そうですが、介護関連の製品や整備を扱う主要な国内メーカーのほぼすべてと、私たちハンドベル・ケアは密接な関係にあります。ライバル社と激しいシェア争いを繰り広げるメーカーとしては自社製品を卸す取引先の選別を進め、製品の価値を確実にユーザー側に浸透させる力のある取引先を育てることで、値崩れを防ぎながらシェア拡大を推し進める戦略を採っているようです。メーカー側にはイムスグループ全体の需要を取り込んでいきたい思惑もあるでしょう。結果的に、私たちハンドベル・ケアでは、こうして多くのメーカーの商品を幅広く取り扱うことでき、豊富な商品ラインナップも強みとなっています」

中野大輔(なかの・だいすけ)
ハンドベル・ケア東京支店支店長。大学卒業後、住設機器メーカーに就職し、大手印刷会社勤務を経て、ハンドベル・ケア入職。2017年から現職。「課題解決型の営業活動を通じて、介護業界の発展の一翼を担いたい」。
飛躍的に進化する介護関連用品の機能
和久井「介護に関連する商材は、多岐にわたります。最近では、情報通信技術(ICT)や人工知能(AI)といった最新テクノロジーを駆使した介護ロボットに注目が集まっていますが、将来的にも介護関連市場の拡大が見込まれるなか、多くのメーカーが商品開発にも力を注いできました。たとえば“紙おむつ”も、この10年、20年で、製品の機能やコンセプトは様変わりしています。最近は、たとえ排尿しても水分の吸収力がアップして逆戻りを防ぐ機能が飛躍的に向上しています。尿の逆戻りの不快感で目を覚ます、かぶれてしまうというようなことを防止するハイスペックな商品が主流です。就寝後、できれば覚醒することなく、朝までぐっすり寝ていただくのがトレンドになっています」
鈴木「ところが、こうした製品のコンセプトが十分に理解されないままに、介護現場の業務オペレーションが組まれているというケースもあります。ご高齢者にとっては、夜間に何度もおむつ交換のために起こされるわけですから、なかなか安眠ができないわけです。ただし、従来、排尿のために不快にならないように、こまめにおむつを交換することが、手間がかかるけれども大切なことであったわけで、製品コンセプトが組織全体に浸透していない状態では、せっかくのメリットが享受されないような事態が、実際に起こり得るのです」
東京、千葉、横浜の3拠点が緊密に連携
中野「医療・介護分野に特化した商社機能と言っても、大きな広がりがあることをご理解いただければと思います。現在、東京、千葉、横浜に3カ所の営業拠点がありますが、病院や介護施設の営業を担当しているメンバーは約20人です。そこで集まってくる情報を一元管理する業務管理システムも導入しています。膨大な情報を効率的に管理して、同じような経営環境にあるクライアント側に提供する情報を、営業担当者間で、リアルタイムに共有しています」
和久井「こうした鮮度の高い情報が生かされるのは、たとえば、補助金を活用した設備投資といったケースです。どういった条件ならば補助金が活用できるか、実際の事例のポイントをお伝えすれば、大きなメリットを感じていただけると考えています」

和久井太郎(わくい・たろう)
2008年にハンドベル・ケア東京店(現東京支店)に入職し、営業畑を歩む。2018年から現職。「安心・安全・満足を提供する、信頼されるパートナー」を目標に千葉エリアの営業展開を牽引。
介護用品レンタルの施設向け提案に注力
和久井「施設向けのレンタルという分野にも可能性があると思っています。車いす、エアマットという製品は、現在はむしろ施設側で備品として購入されるケースが多いかもしれませんが、こうした製品は、それぞれの利用者の身体状況や好みに応じて、いろいろと取りそろえる必要性が出てきます。特に、車いすといった介護製品は、さまざまな特色ある製品の開発が盛んです。施設側では、かなりのコスト負担を強いられることになります。在宅はもちろん、施設であっても、レンタルをご活用いただき、必要なときに必要な製品をご利用いただけるような提案にも力を入れていきたいと考えています」
お客様の懐に飛び込んでいく積極性
鈴木「ハンドベル・ケアに入社して、たくさんの上司や先輩と一緒に働いてきましたが、営業に携わる人間には、いろいろなことに興味関心をもつこと、旺盛な好奇心が大成する条件ではないかと思っています。営業活動を通じて、いろいろなお話をヒアリングさせていただく機会がありますが、ニーズをきちんと把握すること、お声にしっかりと耳を傾ける傾聴する力が大切です。お客様の懐に飛び込んで、忌憚ないご意見、ご要望をお聞かせいただくことが、価値ある提案につながる第一歩だと考えています」
グループが培ったノウハウも積極的に活用
中野「ハンドベル・ケアの大きな強みは情報であるとも言えます。クライアント企業の施設やご担当者様から寄せられる情報に加えて、イムスグループが保有する知的資源も積極的に活用していくことも大切だと感じています。グループの医療・介護の分野で実績や改善につながった確かな根拠がある商材を積極に提案していくのはもちろん、人事・労務、教育、物流体制、感染対策といった幅広い分野の情報をご提供していきたいと考えています」
和久井「ハンドベル・ケアの営業は、積極的な提案やお客様との関係づくりが持ち味です。情報収集力や傾聴力を磨き、お客様に大きなベネフィットをご提供することで、医療・介護の分野に貢献していきたいと考えています」

<ハンドベル・ケアの視点>
IMSグループで商社機能を担うハンドベルケアは、グループ内の導入事例を通じて信頼できる情報やデータを日常的に収集しています。お客様が直面する課題や環境に応じ、グループ内で実績のあるソリューションを提案できることが、大きな強みとなっています。